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注目の「サンタ・ルチア・ハイランド」
99年あたりまでのカリフォルニア・ワイン関連書籍では、その名前を見付ける事さえ難しかった「サンタ・ルチア・ハイランド」。 でも、ここは92年に認定されている、れっきとしたAVAです。サンフランシスコから南へ車で約2時間半、途中、ガーリック生産地の「ギルロイ」や、日系人による花畑の広がるサリナスを通リ過ぎていきます。
数年前から、この地域で作られるシャルドネ、ピノ・ノワールが、一流のワイナリー、ワインメーカー達の注目を集め、最近ではワイン愛好家達もこぞって当地域のヴィンヤードものを集めて飲むようになりました。特に注目を浴びているのが、ピゾーニ・ヴィンヤードから生まれるピノ・ノワール。
ただし、「ど〜このだ〜れだか知〜らないけれど」なんていう歌が出てきそうなほど、その存在が謎のベールに包まれている「ピゾーニ畑」。 ナパやソノマのように「すぐ行ける」距離でもないし、観光地でもない、参考文献もほとんどない、という「ない・ない尽くし」状態の中、ひょんなことからピゾーニさんに会いに行く機会が転がりこんできました。
今回は、「サンタ・ルチア・ハイランド、ピゾーニさん宅訪問記」をお届けします。

レタス畑に囲まれて・・・
サリナスを過ぎたあたりから、景色は畑、畑、またまた畑になります。 頂いた道順も、最後の方は、「道が、舗装されたものから泥道に変わった所で右折」という具合になり、実にわかりやすい。(笑)遠くの方からでも「ああ、あれかなあ」と見当がつくくらい、目指すピゾーニさん宅は広大な野菜畑の真ん中にポツンと建っていました。
道沿いの畑では、丁度収穫の時期らしく、たくさんの人がものすごい早さでレタスを取り入れていました。 ナパやソノマでは葡萄畑が一面に広がる風景が当たり前なので、このレタス畑の風景は、非常に新鮮。

これぞファーマーの家
迷うことなくたどり着いた(迷いようがない) ピゾーニさん宅は、実に実に素朴な平屋でした。ナパやソノマに居を構えるワイナリーやヴィンヤード・オーナーのご自宅と言えば、例えば葡萄畑を一望に見下ろす丘の上に建つ豪華な邸宅であったり、高級住宅地として知られる地域に建つ瀟洒な家であったりするのが、一般的であるように感じられます。
ところが、「ピノ・ノワールならピゾーニ畑」とさえ言われているヴィンヤード&ワイナリーの持ち主は、そのような外見になど全く興味がないかのごとく、素っ気なく素朴な家に住んでいたのです。
これは、私にはかなりの衝撃だったのですが、決して落胆のショックではなく、「これぞ農家の原点。こっちの方が『普通』なんだ」という嬉しい驚きだったのです。

さらに驚きの連続
車を停めると、ピゾーニ・ヴィンヤード&ワイナリー・オーナーのGary Pisoni 氏と、息子のJeff Pisoniさんが出て来られました。 「やあ、よく来たね。 玄関はこっちだ。さあ、どうぞ」という元気いっぱいのGaryさん節につられて、そのご自宅へ。
リビングに入って2度目のびっくり。 先述の邸宅なら、洒落たアートやオブジェが飾ってあるだろうあちこちの場所に、かなりデカい動物の剥製がバンバンバーンと置かれてありました。 このわかりやすさ、このワイルドさ! だんだん愉快になってきました。
リビング横のキッチンをすりぬけて、ガタガタの木の階段をよっこらしょと下りていくと、そこは地下室セラー。 ここで3度目のびっくり。 なんというセラーでしょう!とりあえず崩れない程度には作ってますといった感じの柱や木枠。低い天井。剥き出しの壁。灯りはもちろん、天井からブラさげられた電燈だけ。
これほど「Rustic」なセラーは他に見たことないゾと、静かに感動しつつ、四方の壁に沿ってびっしり並べられた埃だらけのヴィンテージ・ワインを呆然と眺めていました。

チーズでスタート、ソーセージが凄い
地下室セラーに、「じゃあ、早速ランチにしよう」という Garyの声が響きます。 ゴツゴツの大きな木製テーブルの上には、ワイングラス2つと大中のお皿が並べられていました。
そして、でっかいチーズ。 これをチーズ・スライサーでシュッシュとそいだものを指でつまみます。出されたワインは、Jeff が自分のラベルとして始めている「LUCIA」(ルチア)のピノ・ノワールGARYS' VINEYARD 2000。 フレッシュ、フレッシュ、フレ〜ッシュ!という夏の歌がありましたが、香りといい味わいといい、その言葉そのもの。 そして軽やかにグラスを重ねていってしまいます。
チーズだけで2杯もワインを頂いて、気分が良くなってきた頃に、サラダとソーセージが出てきました。
このソーセージ! 見た目は少々おどろおどろしいのですが、一口食べると、その広がりのある味に今日4度目のびっくり。 「これは、私の母親が作っているんだ」と GARY。
ハーブをたくさん使いすぎて香りばかりが鼻につき、お肉本来の旨みがあまり感じられないソーセージが多い昨今、このお母様のソーセージの何と豊かな味わい!あまりに美味しくて 「This is so good. Oh my…. Oh, so great」と言いつつ、パクパクと4本くらい頂いてしまいました。 尊敬すべきソーセージの作り主、グレート・マザーも地下室に下りてこられて、感激のご挨拶。

宴会の始まり
ソーセージに合わせて出されたのが、同じく 「LUCIA」のピノ・ノワール SANTA LUCIA HIGHLANDS 2000.これは、ピゾーニ・ヴィンヤードの葡萄を使って作られた、言ってみれば 「PISONI ESTATE PINOT NOIR」の息子分、弟分になります。GARY'S VINEYARDの軽やかさと比較すると、もっと「シリアス」なピノ・ノワール。 これがまた本当にうまい!! ソーセージの複雑かつ深い味わいにぴったりのワインでした。
ここまで来ると、もう遠慮なんてものもなくなり、ひたすら「美味しい、美味しい」と食べ飲み続けます。
食事が一段落すると、Garyの奥様 Pamがギターを持ってきて、素敵な低い声でカントリー・ウエスタンを歌ってくださいました。
畑の中の一軒屋、見た目なんかまるで気にしてない家の様子、無造作に作られたかのような地下室セラー、グレート・マザーのソーセージ・・・これらが醸し出す不思議な大らかさが、彼女の歌声としっくりマッチして、酔っ払い気味の私をがっしりと包んでくれるのでした。

ピゾーニ・ヴィンヤード拝見
食事のあとは、息子のJeff がヴィンヤードまで連れて行ってくださいました。 車で走ること約10〜15分。 「Sierra de Salinas」山脈のふもと、サンタ・ルチア・ハイランドAVAの南端近くにピゾーニ畑があります。 ロックされているゲートを通り、野外キッチン&バーベキュー場に到着。そこからは、彼のジープに乗り換えて進みます。
うねうねとアップダウンしながら続くヴィンヤード。 このピゾーニ畑は、いくつかの小さなブロックから成っています。 「このあたりは、MIURA(ミューラ)用の葡萄だ」 「ここがテスタロッサ」と、馴染み深いワイナリー名を聞くのもまた楽しいもの。現在工事進行中のケーブも拝見。 途中、新しい木が植わった個所があったので聞いてみると、「シラーを植えてるんだ。このあたりは、シラーに適してると思うんだよね、僕は」と Jeffが楽しげに教えてくれました。

素敵な出会いに感謝
びゅんびゅん風を切ってジープを走らすJeffは、まだ20代前半の若者。この若さで、LUCIAはもちろんのこと、PIZONI ESTATE PINOT NOIRのワインメーカーでもあるわけで、恵まれた環境を自覚しつつワイン作りに没頭する清々しさが感じられ、成熟した好青年だなあ・・・と、ジープでぐらんぐらんに揺られながら思ったのでありました。
家に戻ってきた時、お父さんGaryは上半身裸でソファに寝そべってリラックスしておられました。 この気取らなさが本当に素晴らしい。「かなり個性的な親父だよ」と、Garyのことを教えてくれた人がいましたが、なんのなんのイタリア系らしい陽気さ・大らかさが非常に魅力的な男性でした。
地下セラーの膨大なヴィンテージ・ワインの量に唖然としていた時、Garyが言った言葉が印象的でした。 いわく、「これだけワインにさんざんお金を使って、さんざん飲んで、そして辿り着いた結論がただ一つ、『ピノ・ノワールが最高だ』ってことなんだよ」。
その彼の信念が、灌漑施設などまるでなかった土地を、名声高いヴィンヤードになるまでにしてきたのですから、大きな野望と自信に満ち溢れたGaryの、強く確かな「核」みたいなものを感じました。
素晴らしいワインと驚きのソーセージも感動的でしたが、一番のプレゼントはお別れの時のハグと、「今日から我々は Friendだ」というGaryの言葉、そしてGary & Jeff 親子の大きな大きな笑顔でした。
ワインが導いてくれた素敵な出会いに、心から感謝。

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